著者は、シンガポールに在住し、インドと東京の3拠点で投資事業を行っている方です。
日本に閉じこもっている人と違い、世界の動きを肌で感じている方です。
【1.本書の紹介】
未来を予測する場合、比較的確実性が高いと言われている指標があります。
1つは、人口動態です。
これは、戦争などが無い限り、予想外に増えたり減ったりしませんので、数十年単位で予測が可能です。
次に、テクノロジーです。
こちらは、発明されてから、実用に至るまで、時間がかかるので、だいたい予測が可能だと言われています。
今回は、テクノロジーの面から未来を予測しています。
テクノロジーからの予測といっても、日本ではありません。
世界の未来予測するに外すことができない、米国、中国、そしてインドの動向です。
さて、どんな未来が予測されているのでしょうか?
【2.本書のポイント】
ライドシェアというイノベーションの登場によって、それまで職探しすらおぼつかなかったような人々が生活の糧を手にする。のみならず片言の英語で外国人相手にコミュニケーションに興じる。テクノロジーとイノベーションによって個の力、個の人生が拡張される、エンパワーメントの時代の好例である。
先の米国大統領選挙はテクノロジーによって勝敗が決した。
世界で最も難関と言われる大学はキャンパスを持たず、オンライン上に存在する。
テクノロジーに強い都市は決まって軍事産業都市である。
テクノロジー思考とはこうなる。
近代において世界のあらゆる事象、組織、そして人間にテクノロジーが深く関与し、また支配的な存在として強い影響を与えている技術に焦点をあてた、新しい思考アプローチ。
インターネットはもはや成長産業ではない。他の多くの産業と同じように成熟したレガシー産業である。
医療、交通、物流、教育、製造業等々、リアルでフィジカルな世界をテクノロジーによって再定義する競争がすでに始まっている。
産業の革新とは常に、次の二つの物の組み合わせによって起きる。第一にある技術と別の技術の組み合わせであり、第二に技術と市場の組み合わせである。
デジタルトランスフォーメーションがここにきて活況を見せ、数十年かけて一大革新を社会に起こそうとしている背景は、各分野のテクノロジーが実用に耐えうるレベルの進展を見せていることと、社会の構造変化に伴いあらゆる産業や社会インフラにガタが来つつあるがゆえの「メジャーアップデート要請」、この大きな二つの理由に他ならない。
イノベーションに取り組むものは失敗を量産すべきである。
現時点のコンピューティング性能を人類がフルに産業・生活に生かし、効率化するだけでもあと10年はゆうにかかるだろう。
アルプレヒトはじめ欧州当局者たちは、GDPRが世界のデータ管理の標準になっていくと考えている。その理由の1つはデータとはボーダレスに流通するものだから、一番厳しい欧州に合わせるのが合理的という考えである。
世界の優良企業はそれがテック/ノンテックいずれのセクターにもかかわらず、軒並みインドにおいてR&Dとイノベーション探求に着手しているという事実である。
世界がグローバリズムとテクノロジーの二輪駆動で成り立っている現代社会においては、そのマネジメントに最適化された人種はインド人であるというファクトである。
インドのスタートアップエコシステムの勃興である。
アジアが西洋に負けた根本的な理由は戦争ではなく、その前に起きた産業革命の方にある。むしろ戦争は結果であった。
国の経済規模を決める要素が人口規模からテクノロジーに置き換わったのである。それが、英国によってインドが追い抜かれ植民地化されてしまった理由である。
数学は文明の基礎でありテクノロジーの基礎である。
理工系大学教育を司る AICTE、全印技術教育委員会によるとインドには理工系大学は3000校以上あり、毎年実に150万人以上が理工系大学を卒業している。これは日本の全大卒者の3倍である。そして日本の場合その圧倒的過半が文系である。
イノベーション至上主義化した全世界から一手にイノベーション業務を請け負う、というビジネスモデルをインドは発明、獲得したのである。
米国的リベラルな資本市場経済が隆盛な近現代の先進国が、共産主義国家の中国に敗れると言う、あるはずのないと思われていた事態に面食らっている。
中国が成し遂げつつある官製スタートアップエコシステム、テクノロジーの計画経済的育成が、欧州源流の資本主義、米国的リベラルな市場原理主義に勝利するならば、それは人類史上大きな分水嶺になる。
もし米政府がここまで論じた一連の中国ブロックを行わなかったらどういう世界になっているか。全産業を巻き込んだ通信革命の根っこになる、その上をあらゆる産業や人間生活に関する膨大なデーターが息づくする基地局システム、その世界的ディファクトスタンダードをファーウェイが握っていたことはほぼ間違いないであろう。
フェイスブックが解決する問題とは何か、それは端的に言うならば、豊かになった現代人類が世界共通にさいなまれる2大プロブレム、すなわち「暇」と「孤独」である。
【目次】
序章 テクノロジー思考とは
第1章 テクノロジー産業の現在
第2章 イノベーション至上主義と-スタートアップ全盛時代
第3章 次のあるフロンティアはどこにあるのか
第4章 データ消費主義社会
第5章 欧州という現代のデータ十字軍VSデータ中央集権企業群
第6章 インド-復権するテクノロジー逮捕
第7章 中国テクノロジーの正体
第8章 米中テクノロジー冷戦とは結局のところ何か
終章 テクノロジー思考の実践に向けて
【3.本書の感想】
米国に対して、中国のファーウエイに対する制裁は行き過ぎじゃないかと思っていましたが、そんなことはありませんね。
もし、米国がやっている嫌がらせのような一連の制裁をやっていないと、我々日本人のデータもファーウエイが握りそれはつまり、中国に監視される立場になったと言うことです。
危ないところでした。
日本はボーッとしていますが、これでいいのでしょうか?
不安になってきました。
この本を読んでいると、文系で申し訳ありません。という気になってしまいました。(笑)
米国と中国のテック戦争。
そして、最後の大国と言われるインドの勃興。
インドが漁夫の利を得て、大きく羽ばたく世界が来るかも知れません。
これからは、米国、中国、インドから目が離せません。
この本は、技術面から世界をしっかりと捉えています。
この本を読むと、新聞を真面目に読むようになります。(笑)
ビジネスマンの方は是非、御覧下さい!
歴史の大家による考察です。
米中戦争について語っています。
それでも世界を相手に活躍するAIの日本代表選手です。
最後までお付き合い頂きましてありがとうございました!
【4.著者より!】
著者の蛯原健さんより、リツイートして頂きました!
蛯原健さん、ありがとうございました!