#新生活が捗る逸品 ということで、データ分析の活躍が良く分かる本を紹介します。
【1.本書の紹介】
本書では、著者が大阪ガス社内でデータ分析組織を立ち上げ、18年の歳月をかけて育て上げ、その組織の活躍により存在感を不動のものとするまでの過程について、詳細に紹介されています。
著者は現在、滋賀大学のデータサイエンス学部で教授として、企業で実践的に活用出来るデータ分析を教え、データサイエンティストを育成されています。
データ分析は、AI技術の進展もあり、最近とても脚光を浴びている分野の1つだと思います。
しかし、データ分析組織を社内で立ち上げ、その役割を十分果たせている企業というのは意外と少ないものです。
他社がやっているから、というノリだけでは、データ分析組織は企業には根付かないものなのです。
さて、ではどうして、大阪ガスではデータ分析組織が根付き、成功したのでしょうか?
【2.本書のポイント】
「見つける力」「解く力」「使わせる力」の3つがデータ分析者には不可欠であるというのが、私の持論です。
社内では業務的意思決定にデータ分析を活用するよりも、経営的意思決定に活用する方が、会社から貢献を大きく認められます。
人の壁は「4種類に分けられる」と私は考えています。
(1)事業部門と連携する壁
(2)会社の経営に貢献する壁
(3)分析組織のメンバーを育てる壁
(4)モチベーションを維持する壁
大阪ガスでデータ分析による業務改革の機会を見出す場は、事業部門の担当者とデータ分析者がコミュニケーションをとる時が多いです。
「最初に目的ありき、手段は道具であり、分析結果は成果ではない」。分析者はこの意識を決して忘れてはいけないと思っています。
「見つける」「解く」「使わせる」の三つの力を併せ持つ人材を育てるには3年程度の短期間ではなく、もっと長い年月を要します。
「実現する」ステップでは IT の知識や分析力が必要になりますが、アイデアを「考案する」ステップでは必ずしも要りません。
価値あるサービスを作ることと、マネタイズできるサービスを創ることには、雲泥の差がある。
データからマネタイズできるほどのサービスを考案するには「理系的なセンス」 「ニーズとシーズの双方から発想する力」「ビジネスセンス」の3つが求められます。
一般企業では、自社のビジネスにデータ分析を活用する着眼力やそれを実現するための行動力の方が強く求められます。
データ分析で会社に貢献できる領域はとにかく広いのです。営業の効率化や車両配置の最適化、ロジスティクスの最適化、投資判断の合理化、需給バランスの構成とか、空き家設備の予防保全、点検業務の効率化、発病の予兆、コールセンター業務の効率化、料金設計、市場リスク管理、競合力分析などは、数ある分析テーマの中の一例に過ぎません。
分析結果を活用して業務改革を実現するところまでたどり着いて初めて、ビジネスにどれほど役立つかが明らかになる。
データ分析者の守備範囲を「見つける→得→使わせる」に広げると、責任も成果も非常にクリアになります。
この18年を振り返ってみると、確かに築いてきたものがあると気づきました。それは無形財産である「ミッション」「カルチャー」「レピュテーション(信頼)」の3つです。
私の心にはいつも次のような気持ちが宿っています。
(1)私たちの仕事は社内にイノベーション(業務改革)起こすこと (2)データと分析力は手段に過ぎない。使うけれども手段にはこだわらない
(3)どれだけ素晴らしいイノベーションを考えても、現場が採用してくれなかったら無意味
(4)どういうイノベーションを起こすのか、どうやって現場(人)を動かすのかに知恵を絞る
(5)成果はイノベーションの中身ではなく、イノベーションの結果のみ
データと分析力を武器に他者が簡単には真似できないイノベーションを起こし、ライバルに対して圧倒的な優位性をもたらしてこそ、コンピテンシーと言えるのです。
企業内で働くデータ分析者には3つのモチベーションが必要だと考えています。
(1)挑戦するモチベーション
(2)壁を乗り越えるモチベーション
(3)継続するモチベーション
全員のモチベーションレベルをリーダーである私が常に肌感覚で知っておくためには、どうすればよいのか。私は3つの方法を取り入れています。
(1)メンバーが部外に発信するメールは全て、私に BCC入れてもらう
(2)毎日、できるだけ多くのメンバーと会話する
(3)月に1度、メンバー同士で「がんばったで賞」を選ぶ
SE にとって、データ分析をする上での最も高い壁は、目標遵守型の価値観に固執せず、目標創造型の価値観に頭を切り替え、新たな仕事の進め方を身につけていくことです。
手段をやりたいことと勘違いしているメンバーには、そうではなく、業務改革をやりたい事に位置づけるように意識改革を促す必要があります。
どうすれば、関係者の協力を取り付けられるのか。全ての基本は「関係する立場にある全ての人を幸せにすること」です。
【目次】
はじめに
第1章 ビジネスアナリシスセンターの実像
第2章 4種類の「人の壁」を乗り越える
第3章 事業部門から信頼と予算を勝ち取る
第4章 分析組織は経営に必ず貢献できる
第5章 メンバーの幸福を勝ち取る
第6章 18年かけて築いた3つの無形資産
第7章 分析組織のリーダーに求められるもの
おわりに
【3.本書の感想】
大阪ガスってご存知ですか?(笑)
関西圏では誰もがみんな知っている都市ガス屋さんで、上戸彩さんが「さすガっス」と言って宣伝しています。
我が家も大阪ガスユーザーっス。(笑)
子どもたちの間では「ピンポ~ン、こんにちは、大阪ガスでガス」で有名です。
ちなみに東京では「ピンポ~ン、こんにちは、東京ガスでガス」で有名ですね。(笑)
この本を読むまで、大阪ガスでデータ分析組織が立ち上がり、活躍しているという事実そのものを知りませんでしたので、何が成功したのかよくわかりませんでした。(笑)
著者は、18年かけてデータ分析組織を育てていきますが、目指すのは分析スキルの向上ではなく、分析結果を提供現場が使ってくれることだと、一貫して言っています。
そのためには、その提供部門とコミニュケーションを取り、しっかりそのニーズを掴むことが大切だと言っています。
これは、自分勝手な思い込みで進めると、役に立たないものを作ってみたり、役に立たない結果になるという一般的なプロジェクトの失敗にも通じることです。
そして、チームリーダーとしては、部下の業務把握、モチベーション維持・成長、お互いに信頼出来るチームにするための事例が紹介されていて、データ分析そのもの以外の著者の悩みやその解決方法がよく理解できます。
この本は、企業内にデータ組織を立ち上げて育成したい人や、データ分析に関わらずプロジェクトをうまく推進する方法を学びたい人にはとても参考になる本です。
是非、御覧ください!
【4.関連書籍の紹介】
データ活用で有名な会社と言えば、そうワークマンですね!
データ活用と言えばAI、AIはどこまで人に近づけるのか?
AIを活用出来るのは、バリバリ理系のデータサイエンティストだけではありません!
日本のハイレベルなAI技術者集団のお話です。
ID野球というデータ活用野球を始めたのは、そう、野村監督です!
データは、見せ方です。データがひと目で分かると、不毛な議論は不要になります。
最後までのお付き合いありがとうございました!