【1.本書の紹介】
前回の「コロナショック・サバイバル」の続編になります。
著者はこの方、企業再生業界の「キングカズ」こと冨山和彦さんです。(笑)
著者直々の紹介を聞いてみたい方はぜひこちらをご覧ください。
冨山和彦『コーポレート・トランスフォーメーション』発売! 著者メッセージ
今回の作品は前編の3倍程のページ数があります。
そのボリュームの中に、企業再生のプロとしての経験をもとに、これからの企業がどうしていくべきなのかを指南しています。
日本が負け続けてきた過去を振り返り、今こそ変わる時であり、復興するチャンスが来た!と言っています。
さて、企業が、日本が復興するためにはどうしていけばいいのでしょうか?
【2.本書のポイント】
シリコンバレーには「技術を買うな、人を買え」という技術経営に関する格言があるが、技術進歩が爆発的、不連続に加速する時代においては、今、この瞬間において傑出した個人を世の中から集める力、言い換えれば組織の新陳代謝力が、競争に勝ち抜く組織能力の有無を規定する。
終身年功型の組織で構成員の迅速な入れ替えができない日本企業(基本的な新陳代謝のサイクル、すなわち社員全員が入れ替わるサイクルは約40年)の多くは、ここで野球を長年やってきたメンバーを中心にサッカーをやらせる戦い方に出る。
日本的経営においては、CEO が正しいと考える戦略的決断も、よほどのことがない限り社内のコンセンサスが取れなければ意思決定ができない。私はここでもまた日本的経営の壁に跳ね返された。
将来世代のためにも、経営者世代の私たちは心を鬼にして破壊王世代になるべし!
なぜ、圧倒的な顧客基盤と経営資源を有するナンバーワン企業の多くが、時代の変化、取り分け破壊的イノベーションの波に飲み込まれ、甚だしい衰退に追い込まれるのか?
今や現実の戦略は組織能力の従属変数であり、変転を続ける最適戦略を打ち続けられる組織能力を持っていることが真の競争優位性の源泉なのである。
誰かが起こした(起こしつつある)破壊的なイノベーションに対して、どうすれば後手を踏まずに的確に対応できるか?一度ならず何度でも
詳しくは『両利きの経営』に譲るが、ここに登場する多数の事例研究から浮かび上がってくるのは、日米を問わずハイブリッド型の経営、多元的な経営を実践すること、しかもそれを持続的に行う両利きの組織能力を企業が身につけることが困難であることと、これまた日米を問わず、経営次第、経営者次第でそれは実現できるという示唆である。これから反転攻勢を期す日本企業にとって実にencouraging(心強い)ではないか!
浅薄な経営評論家たちはGAFAの覇権、アリババやテンセントの派遣は永久に揺らがない、産業の進化発展は最終段階だ、みたいな戯れ言も言うが、40年前のコンピューター産業におけるIBMの覇権の強固さは今のGAFAどころではない。
破壊的イノベーションの時代に適応する会社のカタチは、日本社会においても、日本人の手によっても現実可能なのである。
コロナショックでいろいろな企業の価格が下がっている今、M & A上手な経営者とそのプロスタッフたちは、買収対象リストをながめながら鵜の目鷹の目のはずだ。
グローバル市場で戦っている企業は、とにかく経営幹部候補の国籍、性別、年齢の多様性を実現することに本気で取り組むべし。彼らは日本の労働環境や給与体系になじまないなら、それを変えるべし。日本国内の法制度が邪魔なら、海外で働いてもらうべし。
CX 度合いを測る最後の最も重要なメルクマールは、ズバリ世界中の優秀な若者から選ばれる会社の姿かどうか?である。
オープンイノベーションの最重要な狙いは、国籍、老若男女を問わず、アーキテクチャー構築力、アーキテクチャー転換への対応力を組織能力として持続的に持ち続けることとなる。
私たちは東北地方で路線バス事業を営んでいるが、仮にベトナムのバス会社がハノイで1/20の人件費でバスを走らせていても全く競合関係に立たない。これがG (グローバル)型産業の電気製品メーカーの東北の工場なら、1/20の人件費で運営されているベトナム工場とガチで戦うことになる。
政府の色々な補助制度や規制による保護も加わると、産業の新陳代謝が進まず、生産性の低い事業者でも生き残れる余地を作ってしまう。
要は優秀な経営人材こそが希少資源であり、その希少資源に一つでも多くの企業体を経営させた方が良いという意味でも、会社の数を減らした方がいいのだ。
上場企業の場合には統計的にいわゆる同族経営企業の方が長期的に業績が良いという結果もあるそうなので、より良く機能する立憲君主制のガバナンス体制は現代的なモデルとも言えるかもしれない。
破壊的危機と破壊的イノベーションに翻弄される時代、地道な家族経営モデルの方がレジリエント(強靭)でむしろ現代的なビジネスモデルとも言えるのだ。今どき小さな店舗でも独自性を出すことにより、インターネットで日本中、世界中から顧客を呼び込める業態においては。なにせ本来の分散型ビジネスの経済性に忠実で、固定比率の低い経営スタイルなのだから。
地方の中堅・中小企業の CX を進めるための鍵のひとつは外部人材を経営幹部として招聘、活用することである。
日本のような成熟した先進国経済の成長シロは、L(ローカル) 型産業群の生産性の向上と賃金上昇にこそあり、デジタル革命の主戦場はまさにこうした産業群のリアルでフィジカルが領域のアプリケーションにシフトしている点で、問題解決にとって追い風が吹きつつあるのだ。
破壊的危機の時代、破壊的イノベーションの時代においては、まさに経営サービスを担う経営者、リーダー自身の能力が企業の生死と成長を大きく規定する組織能力となる。
米国はもともと優秀な学生ほど起業家指向が強いが、株式会社が本来想定している大会社corporationよりも中小企業、すなわち生々しい人間の顔が見え、手触り感のある会社英語で言えば a company(仲間)で働くことを選ぶ時代になっている。
CX だけでなく、世界、国家、世界の色々な次元でトランスフォーメーションが起きると、対価をもらえるお役立ちの業(わざ)の発揮の仕方、すなわち働き方もどんどん変容していく。
【目次】
はじめに 会社を、生き方を、日本を、そして世界を変えよう
第1章 今こそ「日本的経営モデル」から完全決別せよ
第2章 両利き経営の時代における日本企業の現在地
第3章 CX ビジョン 目指すべき会社のカタチ、持つべき組織能力とは
第4章 CX=「日本の会社を根こそぎ変える」を進める方法論
第5章 日本経済復興の本丸-中堅・中小企業こそ、この機に CX を進めよ
第6章 世界、国、社会、個人の トランスフォーメーションは、どこに向かうのか?
おわりに CX からより良い会社の再構築を始動しよう
【3.本書の感想】
組織能力がどうのとか、CXが必要とかいろいろ難しい事を言っていましたが、企業は結局、「経営者次第だ」と聞こえたような気がします。(笑)
よく、コンサルタントの人たちは、理屈では正解かも知れませんが、現実的に実行しようと思うとなかなかうまく行かないことを平気で言います。(と言われています。)
本書では、わかりやすいように、企業の事業環境の変化を野球からサッカーに変わったということにして、企業存続の為には、これまで野球をやっていた選手にサッカーをやらせるのではなく、サッカー選手を連れてくるべきだと言っています。
そうですよね。
その通りです!
世の中では、サッカーが行われているのに、いつまでも野球選手で戦っていては、会社が持ちませんよね。
サッカー選手を連れてくればいいのです。
そんな簡単なお話の何が難しいのでしょう?
それは、日本の企業は終身年功型なので、今まで頑張ってきた(と思われる)社員を簡単に解雇することが出来ないからです。
だから、世の中がサッカーの時代になったよと言われても、そんな簡単にはサッカー選手と入れ替えが出来ないのです。
ベンチの中に入っていたかはどうかは別として当然私は、野球選手です。(笑)
ちなみに、少年時代は、王貞治選手にあこがれていました。(笑)
私のような野球選手の扱いに困るのが、昭和チックな会社なのですが、わかっていても、コンサルの言うようにスパッと切るわけにも行かず、改革は進まないのです。
野球選手、今ならサッカー選手ばかりを雇うのではなく、企業が存続していくためには、両利きの経営(今の事業を深める事と、新しい事業を探索する事)つまり、サッカー全盛の時代に、バスケット選手や水泳選手などを雇用していく事に挑戦し続ける組織にしなさいと言っています。
やっぱり、言うのは簡単ですが、やるのは難しいですよね。(笑)
ここに、机上の空論と現実とに乖離が発生するのですが、この乖離の幅をうまく縮めるのが腕利きコンサルタントでもあります。
理想論だと言われる部分もあるかも知れませんが、この本にはとてもいい事がたくさん書かれています。
たくさん引用したかったのですが、引用したい部分がありすぎて、引用を絞り込む為に本を読む時間以上に時間が掛かりました。(笑)
会社経営に関わる方、これからの商売、生き方を探している方にはとても参考になる本ですので、ぜひご覧ください!
コーポレート・トランスフォーメーション 日本の会社をつくり変える (文春e-book)
今なら、「コーポレート・トランスフォーメーション」が無料で聞けます!
今回ご紹介したコーポレート・トランスフォーメーションの前編はこちらです。
コロナショック・サバイバル 日本経済復興計画 (文春e-book)
本を買って読むのが面倒な方は、こちらをご参考ください。(笑)
本書の中に出てくる「両利きの経営」です。ベストセラーになっていますので、気になる方は是非ご覧ください。
こちらはドラッガーの本です。とてもいい本です。
最後までのお付き合いありがとうございました!