京都のリーマンメモリーズ

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【書評】「アート思考」の技術 長谷川一英 同文館出版


 

今週のお題「卒業したいもの」

春は花粉症のシーズンですね。私は、最近軽度の花粉症になっています。花粉症のつらさは、花粉症になってみないとわかりませんね。ひどい人の鼻をかむ回数というかティシュの消費は半端ないですね。毎年、このシーズンになると花粉症を卒業したいと思っています。今回は、アート思考がイノベーションを創出するという事を教えてくれるすんごい本を紹介します。(笑)

【1.本書のポイント】

最近は、デザイン思考という考え方が流行っていて、どこもかしこもデザインデザイン、と言っている感じがします。
 
会社組織は、効率化していくものなので、結局は単純作業になります。
 
そうすると、前後のことは考えなくなるので、その製品やサービスを受け取る人がどのように感じたりするのかなど考えるヒマがありません。
 
だから、目の前の事を一生懸命、時間通りにこなすことに必死になります。
 
少々、粗くても。
 
そういう会社は、そのうち付加価値の高いものを作れなくなり、値段勝負になって、さらに人間が機会のように使われて、ブラック企業化していくという悪循環に陥ります。
 
一方、日本企業が素晴らしいコンセプトを考えて、他とは違う製品サービスを創るためには、アート思考が良いそうです。
 
さて、アート思考とは、どのように使えば良いのでしょうか?

【2.本書のポイント】

アート思考を、「自らの関心・興味に基づき、常識を覆す革新的なコンセプトを創出する思考」と定義します。
 
デザイン思考とは、「商品やサービスを使うユーザの視点から、ビジネス上の課題を見つけ、解決する解決策を考えること」を指します。
 
日本企業が、革新的なコンセプトのイノベーションを起こすことができるようになるには、現代アートのアーティストたちの思考や行動に着目するのが有効だと考えています。現代アーティストが作品を制作するときに、自らの関心・興味を起点に革新的なコンセプトを考え出しているからです。
 
アートは必ずしもアーティストによって作られる必要はなく、斬新なアイディアを提起することこそ価値がある。
 
科学の歴史において、人類に利益をもたらした重要な発見のほとんどは、役に立つためではなく、自分自身の好奇心を満たすために研究にかきたてられた人々によって成し遂げられた(アブラハム・フレクスナー)
 
真のイノベーションは人々が自由な心と集中力を持って夢を見ることのできる環境から生まれる事は確かである。(ジャン=ルー・シャモー)
 
アーティストが作品を制作する過程を追体験する5つのステップ
ステップ1:現代アートの作品鑑賞でアーティストのコンセプトを探る。
ステップステップ2:興味を持った社会事象についてリサーチし題材を集める。
ステップ3:集めた題材から常識を覆すコンセプトを作る。
ステップ4:作品を制作することでコンセプトを可視化する。
ステップ5:革新的コンセプトから事業プランを構想する。
 
なるべく多くの作品に触れて、こんな革新的なコンセプトを考えているのかと言う驚きを経験することが効果的。
 
アーティストたちに、どのように作品コンセプトを作ったのかを尋ねると、「リサーチして根本から考えることを繰り返しているうちに、思考が飛躍する時がある」といいます。
 
「往復書簡」
忙しい中では、なかなか良いアイディアは出てこないので、スピードダウンさせることも必要ではないと考え、提案したのです。
月に1回程度、参加者に作品を創る題材とお題が送られてきて、そのお題について思ったことを作品にして返送するというもの。
 
アーティストはあえて極端な非効率性を求め、その無駄の細部に真実を見出そうとする場合があるが、企業では効率性が求められる。しかし、双方とも世界をより良くしようとしている点では共通しているので、お互いがフラットな関係をもてる場をいかに作っていくかが重要です。(久門剛史)
 
【目次】
■Prologue ──イノベーションへと導く「アート思考」
■第1章 これまでにないイノベーションを起こす「アート思考」
■第2章 革新的なコンセプトを考え、実現させるアーティストの3つの力
■第3章 「アート思考」の実践①「アート思考」を身につけるワーク5つのステップ
■第4章 「アート思考」の実践②アーティストと協業する「アーティスティック・インターベンション」
■第5章 「アート思考」の実践③アートから得るSDGsの新たな視点
■Epilogue ──「アート思考」で「2回目のコペルニクス的転回」を目指す

【3.本書の感想】

企業は利益を少しでも高めるために、生産性を高めたり、効率性を追求してしまいます。

 

その結果、同じものをいかに速く作るかに注目する為、製品自体の魅力が上がりません。

 

そうすると、人件費勝負になってしまします。

 

付加価値を上げる。

 

これに近いのが、革新的なコンセプトを創ることです。

 

同じような製品はありますが、考え方が共感されると、その製品にお客さんをひきつけます。

 

ウォークマンは、家から音楽を持ち出すというコンセプトで一世を風靡しました。

 

ななつ星(JR九州)も「移動のための乗り物」から、「移動を楽しむ乗り物」にコンセプトにした結果大変人気を得ています。

 

モノづくりは、いかに安く作るかという点で、頭打ちになっているところがあると思います。

 

今までは、価格を抑えて、いかに良いモノを作るかという事を一生懸命考えてきました。

 

しかし、新しいコンセプトを考えるという点では、まだまだ未開拓な場面も多いと思います。

 

アートとは、美しいものをつくるものだと思っていましたが、近代アートは、新しいコンセプトを創る事なんですね。

 

そう言われると、ピカソの絵が、多面的な視点から描いたものだと言われて、なんとなく納得できるような気がします。

 

ピカソの絵は、「アートは美しいもの」という視点から見ると、どうしてもアートには見えません。(笑)

 

特に、近代アートは、理解しづらいものが多かったですが、それは、自分が美を基準にしていたからだとわかりました。

 

これからは、コンセプトは何か?これに注目してアートを鑑賞したいと思います。

 

この本は、デザイン思考を一歩進めた、新しい考え方を紹介しています。

 

新しい製品・サービスの創出に困っている方、近代アートを理解したい方には、大変お勧めです。ぜひご覧ください!

「アート思考」の技術

 

【4.関連書籍の紹介】

デザイン思考で有名な企業はこちらで紹介

www.fukuikeita21.com

経営にデザインを持ち込むとこんな感じ

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イノベーションは1人から始めます

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ガラパゴスが悪いわけではありません

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