京都のリーマンメモリーズ

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【書評】砕かれたハリルホジッチ・プラン 日本サッカーにビジョンはあるのか? 五百蔵容 星海社新書

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【1.本書の紹介】

知人に紹介を受け、読んでみました。
 
2018年4月9日、急遽解任されたハリルホジッチについて検証というよりも熱烈抗議をしている本です。
 
自分はサッカーについては詳しくないので、難しいところが多々ありました。
 
しかし以下の点は私にも伝わってきました。
 
ハリルホジッチは、戦略・戦術を考えていたし、今後、日本のサッカーが向上していく為には必要な人物であった。
 
それなのに、なぜ解任したんだという猛烈な憤りを感じている。
 
物事に対して反論をする際は、それなりのデータが必要ですが、この本は、ハリルホジッチの解任はなぜダメだったのかを十分なデータで説明しています。
 
世界と戦うには、絶対的な個人の力量も問われるが、まずは個々人の体調面の準備は必須ということが理解できました。
 
確かに、ぶよぶよした体型では世界と戦えません。
 
もし、チームとして力量に差がない場合は、戦略、戦術が大きく勝負を左右することも理解できました。
 
今後、サッカーを見る時には、今までとは違う見方ができると思います。
 
サッカーファンの方には是非とも一読して頂きたい本です。
 
そして、ご自身でハリルホジッチの解任の意義を考えて頂きたいと思います。
  

【2.本書のポイント】

一試合の中で多様な状況遷移が生じる現代サッカーでは、その変化の中で不可避的に出現する組織の穴や、仮想フィールド外を守るための1対1が必然的に発生する。そのデュエルに勝つこと・負けないことが、チームを戦術的にだけではなくエリア戦略的にも守ることになるし、攻撃側からすれば相手の組織を破るチョークポイントになるのです。
 
ハリルホジッチが招聘された理由は、もとより「どこかのエリアだけ」にとどまらない多様なエリア戦略を取れるチームを作り上げること、日本サッカーにそのような戦略的、戦術的多様性と柔軟性をもたらす事でした。
 
ハリルホジッチはただ「相手の長所を消し、相手の短所を付く」と言うレベルの戦術家ではありません。相手チームがどういう戦術的なトレンドに乗っているのか、相手の指揮官がそのトレンドをどう解釈して、どう用いているのか?といったかなり抽象度の高いレベルで相手チームの構造体、骨格を見抜いてそこに機能不全にする手立てをもくろむ監督です。
 
日本が現実的に招聘可能な「セカンドトップ」の監督の中では、ハリルホジッチは最高クラスの経験と実績を保有していました。そういったレベルの監督を解雇し、しかるべき水準の後任を据えるリスクマネージメントの準備がJFAにあったのか、それとも日本人スタンフで固める現在の人事がもとより「ハリル後の代案」と考えられていたのか。今後の展望を開く上で、そこを問うことが重要になってくると思われます。
 
現代サッカーでは、「ゾーンDFの精緻な理解に基づいた、人とスペース双方に強く当たる守備」が高いレベルでプレーするには不可欠なものになっています。そういった守備を実践するためには、目まぐるしく変化する状況の中で周囲と連動しながらスペースを確実に消していくゾーンDFの習熟も、高いレベルのDHも必要ですし、高い戦術理解力で周囲を動かしながら守備をできるアンカープレーヤーまた必要になります。その全てが日本サッカーでは不足しています。
 
日本サッカーに不足しているか、さらなる向上が必要とされている課題へのソリューションをこれほど明確にもたらし得る指導者が、しかも意図を思って招聘された事は、かつてなかったのではないかと思われます。それだけに、そのような機会が「コミュニケーション上の問題」と失われた事は日本サッカーにとってきわめて大きな損失と考えられます。
 
世界の強豪、トップレベルの代表選手たちは軒並み体脂肪率10%以下の、軽快かつ質の高い筋力によって武装したフィジカルでプレーしています。彼らに望む「格下」の日本代表が、そのような状態で十分に戦えるでしょうか?
 
少なくとも真剣に考えなければならない4つの問題があります。1つは、Jリーグの問題。体脂肪率にセンシティブにならずとも代表に選ばれるだけの結果を残せるような状況がそこにあることを意味しています。2つ目は、とは言え代表監督に個人メニューまで託され、折に触れて緻密な状況確認の下にあってなおこの重要な数値を減らすことができない、代表クラスの選手たちのアスリートとしての意識。3つ目は、そういった現象に対して決定的な影響を及ぼしきることができなかったハリルホジッチのアプローチ、コミニュケーションの問題。そしてこの問題を幾度も直接的に明かされていながら、国内選手の状況を改善に向かわせるための議論・世論形成を行おうと言う意思すら見せなかったメディアの問題です。
 
もし自分が代表監督になったらと言うシミュレーションのために作っていた。その資料をもとに、現在の日本代表はこういうところがストロングポイントで、こういうところが課題で、結果W杯ではこうだった、アジアカップではこうだった。そこからこういうことが導き出されるので、私が監督になったらこのような方針でやりたいと思っている。そういう具体的な話をしてくれました。
 
ヨーロッパの監督はみんなそうで、日本人監督にはなかなかないところなのですが、ホームとアウェーの違いを明確にします。

【3.本書の感想】

いや~ぁ、サッカーって奥が深いですね。

 

この本を読んで、ハリルホジッチ監督は、根本から日本のサッカーを変えて強くしようとしていたと私は感じました。

 

それだけに、良い監督を失ったのは大変残念だと思いました。

 

ということは、この本が世の中問う、ハリルホジッチ監督の解任は間違いでしょう!という主張に、私はすっかりハマってしまった事になります。

 

ハマってしまっても、嫌な感じはなく、逆に清々しい気持ちです。

 

いい勉強になりました。

 

サッカー観戦をする際、個々のチームの戦略を確かめるには、テレビなどの解説を聞きながらの方が理解しやすいですね。

 

今、すごくその解説を聞いていみたいと思っています。

 

以前は、特に意識していませんでしたが、解説にも、解説者の力量が問われますね。

 

これからは、解説者の考えを良く聞きながら試合を見て、サッカーを味わいたいと思います。

 

私もたまに、近所の西京極陸上競技場へ、京都サンガの試合を観に行くことがあります。

 

次回からは、ラジオを持ってサッカー観戦をしようと思います。

 

そしてこの本を片手に、戦術を確認しながら観てみたいと思います。

 

サッカー観戦でビールを味わうのはしばらくお預けします。(笑)

 

ご興味のある方は是非ご覧ください!

砕かれたハリルホジッチ・プラン 

 

最後までのお付き合いありがとうございました!