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【書評】22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる  成田悠輔  SB新書

 今週のお題「SFといえば」 

SFといえば、宇宙人ですね。自分の理解を超えた存在です。そういう意味では、日々の生活の中で、そんな人やモノに出会ったりすることは多々ありますね。今回は「選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる」という宇宙人的発想をしているすんごい本を紹介します。(笑)

【1.本の紹介】

最近、この著者は至る所で引っ張りだこになっているようで、あちらこちらで顔を見かけます。

 

眼鏡のレンズ部分が、丸と四角というのもとてもユニークですね。

 

本書では経済学者が、22世紀の民主主義を語ります。

 

元々、政治は専門分野ではないので、イイ感じに力が抜けた自由な発想を展開しています。

 

政治の世界にデジタルを展開すると確かに、合理的に速く決めることができそうです。

 

さて、民主主義の劣化を防ぐためには、どうしていけばいいのでしょうか?

 

【2.本書のポイント】

民主主義の劣化が今世紀に入ってから世界的に進んでいること、そしてその劣化の加速度が特に早いのが民主国家である。

 

加速する結果と連動して、民主国家の経済も閉鎖的で近視眼的になってきた。

 

21世紀後半、資産家たちは海上・海底・上空・宇宙・メタバースなどに消え、民主主義という失敗装置から解き放たれた「成功者の成功者による成功者のための国家」を作り上げてしまうかもしれない。

 

本当に問題なのは、情報通信環境が激変したにも関わらず、選挙の設計と運用がほとんど変化できていないことだ。

 

選挙やその仕組みをどう改造すれば良いだろうか?

 

若者の怒りが絶頂に、そして脱力に変わりつつあるように感じる。老害を葬り去ってくれるはずの葬式がどんどん先に延び延びになり、政治がゾンビ化した高齢者に占拠される。

 

人口減少と高齢化という新しい潮流が世代間対立という古い伝統に流れ込む時、シルバー民主主義という荒々しい潮目が生まれるわけだ。

 

ほとんどの政治家は知名度も権力も資産も中途半端なただの人で、人から気に入れられ続けなければ、立場を保てない。その残念な現実がシルバー民主主義を生んでいる。

 

SNS でのコミュニケーションはだいたい公開で無料という慣習は崩れ、適度に閉じて そこそこ 課金・課税されるのが当たり前という風土に変わっていくかもしれない。

 

根深い問題がある。それは若者が貧乏になっていることだ。今の日本でお金と時間を持つのは 高齢者だ。なので、彼らは「文化が」とか「国家が」とかフワフワしたことを考える時間も余裕もある。

 

タックス・ヘイブンがあるように政治的「デモクラシー・ ヘイブン」もあり得るのではないか?

 

自由と民主主義が両立可能だとはもう信じられない(ピーター ・ティール)

 

選挙はデータ処理装置、驚くくらいざっくりと設計された単純明快なデータ処理装置と言える。

 

「しょせん選挙なんか、多数派のお祭りに過ぎない」とすれば、無意識民主主義は多数派+少数派の日常になる。

 

無意識 データ 民主主義は、投票(だけ)に依存せず、自動化・無意識化されている。その結果、多数のイシュー論点に同時並行対処できる。意識的な投票・選挙が作り出す同調やハック、分断も緩和することができる。

 

無意識民主主義は退屈で常識的な近未来像だ。

 

民意データを無意識に提供するマスの民意による意思決定(民主主義)、無意識民主主義アルゴリズムを設定する少数の専門家による意思決定(科学専制・貴族専制)、そして情報・データによる意思決定(客観的最適化)の融合が無意識民主主義であるからだ。

 

私は「調整者・実行者としての政治家」は、ソフトウェアやアルゴリズムに置き換えられ 自動化されていくと思っている。そして、「アイドル・マスコット・サンドバッグとしての政治家」は猫やゴキブリ、vtuber や バーチャルインフルエンサーのような仮想人に置き換えられていくと読んでいる。

 

私たちの社会はだんだん「人間を属性で区別するな」という社会になっている。この流れが今後も続くと、人間とそれ以外の動物や生命も区別するなという方向に行くと予想できる。

 

猫市長が実質的に誕生したこともある。アメリカのアラスカ州タルキートナ市だ。

 

こうした話をするとよく出てくるのが「ネコやアルゴリズムに責任が取れるのか」という疑問だ。しかし、そもそも人間の政治家は取れているのだろうか?

 

【目次】

A.はじめに断言したいこと
B.要約
C.はじめに言い訳しておきたいこと
第1章 故障
第2章 闘争
第3章 逃走
第4章 構想
おわりに:異常を普通に

【3.本書の感想】

政治に興味が無いと言っている割には、とても面白い考え方を提示していると思います。

 

著者を高評価する人は多いと思いますので、違う視点で感想を述べたいと思います。

 

1つ目は、なんでもデジタルにしちゃおう的な安易な発想に感じました。

 

確かに、今後はIoT技術を使えば、我々の様々な情報は簡単に吸い上げられ、政治に関する民意データも簡単に集めることは可能です。

 

著者は、これをやれば、現在の選挙のように民意があまり反映されない政治が変わると主張しています。

 

その可能性は十分あり得ると思いますが、これに至るまでには、データまかせの政治するのか、やはり人間を中心にするのか、折衷案にするのかの議論があり、これこそが人間が考えるべき重要事項になると思います。

 

ただし、変革するために面倒になるのは、老害が原因だとの指摘は、ごもっともだとは思います。(笑)

 

2つ目は、今世紀に入ってから、民主国家はそうでない国よりも経済成長が弱かったと指摘していますが、それは、すでに民主国家は経済成長してしまったという点が欠けているところです。

 

先進国が多い民主国家よりも、新興国の方が物質的にも足りないものが多く存在するため、経済活動も活発化するのは当然だと思います。期間を区切ると確かに著者の言う通りですが、その期間設定については、議論が必要だと思います。

 

一応、難癖をつけてみましたが、この本は少し難しいところがあるにせよ、とても面白いです。

 

若い世代は、世の中をこういう風にとらえることができる、ということがよく理解できます。

 

もし、この著者がそれなりの権限を持ち実行したならば、日本は確実に変わると思います。

 

それに比べて、今の政治家のやっていることは、直接やりたいことをやっているというよりは、ドロ沼化しているというか、仕組みや制度が足かせになり、本来やりたいこととは違うことに、注力が必要な状況になっていると思います。

 

普段政治にあまり関心のない私が、政治はこのままでいいんだろうか?と考えさせられてしまいました。

 

あまり政治に関心がないと言う著者の罠に、すっかりハマってしまいました。(笑)

 

デジタル化を上手く政治に展開した未来をよく考え、示したところはとても良くできていると思います。

 

デジタル化が叫ばれている昨今と、変わらない政治を題材として、上手く組み合わせて解決策を提示した本です。

 

是非ご覧ください!

22世紀の民主主義

【4.関連書籍】

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最後までのお付き合いありがとうございました!

 

【5.出版社より】

SBクリエイティブの多根さんからいいね!を頂きました!

多根さん、ありがとうございました!