京都のリーマンメモリーズ

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【書評】SDGsの不都合な真実 「脱炭素」が世界を救うの大嘘  川口マーロン恵美+掛谷英紀+有馬純ほか 宝島社

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今週のお題「買ってよかった2021」

買ってよかったのはこの本です。(笑) 最近はSDGsというキーワードを聞かない日はありませんが、その問題点を提示しているすんごい本を紹介します。(笑)

 

【1.本書の紹介】

最近「SDGs」という言葉を聞かない日はないというほど、あちらこちらで見かけますね。

 

持続可能な発展をしていきましょうというものですが、ゼロカーボン、脱炭素という言葉も、毎日のように新聞や雑誌に登場しています。

 

日本は、環境対策に消極的だと、しばしば海外メディア等から指摘されています。

 

本当に環境対策に消極的なのでしょうか?

 

また、日本も2050年にカーボンニュートラルを目指すと宣言していますが、本当にそれで良いのでしょうか?

【2.本書のポイント】

日本は脱炭素政策という自滅的な政策をやめ、化石燃料のメリットを活かして安定・安価なエネルギー供給体制を構築し、中国に対する強い国力を構築していかねばならない。

 

脱炭素のための負担増は、再浮上が難しいほどの日本経済の低迷を招くことになる懸念があるだけに、経済情勢と産業構造が異なる欧米と同じことをするのではなく、経済と国民生活を考えた脱路線を目指すべきだ。

 

日本が得意なエンジン車やハイブリッド車を締め出し、EV を推進する。国家、あるいは地域ぐるみのゲームチェンジによって覇権を握ろうとしているのが、ドイツを中心とする欧州自動車メーカーの戦略だ。

 

目標を達成するための手段には必ず歪みが出る。しかも、狡猾な海外勢と違い、日本政府もホンダも逃げ道を確保せず、世界に向けて「約束」をしてしまった。

 

EU は日本の味方ではないし、規制はしょっちゅう変わる。穿った見方をするなら、「国境炭素税」は、中国や日本の製品を EU から締め出すための作戦かもしれないのだ。

 

ドイツは伝統的に石炭をベースに発展してきた国で、発電は今も4割を石炭と褐炭に依っている。

 

脱石炭は、企業の株主の権利を侵し、また、何万もの炭鉱や関連業種の労働者から生活の糧をも奪うことになる。

 

実態が伴わないのに環境対策を装って資金を集める行為は、「グリーンウォッシュ」と呼ばれるが、この偽装グリーンが世界で問題になっている。

 

現在の人類の活動は持続可能ではないので、行動を変革することこそ重要-ここがSDGsの本質なのだ。現実にはなんら行動変革を伴わず「我が社はSDGsに貢献しています」と宣伝する事例が再生産されている。

 

SDGs に取り組んでいると自称している企業や、胸にSDGsのバッチをつけている人は以下の二つの質問に答えてみて欲しい。

①その活動は2015年9月以降に開始したものですか?

②2015年9月以降に始めた場合、活動はSDGsがあったから生まれたものですか?

この両方を満たさなければ、SDGs ウォッシュと言われる可能性があるだろう。

 

現在でも「今の活動をSDGsの項目に紐をつければ OK です」と言い続ける企業コンサルタントで溢れている。

 

筆者がコンサルタントの立場であれば、従来の活動を棚卸ししてタグ付けした後に、「現在白紙の分野で新たな活動や新規ビジネスを始めましょう。上手くいけばウェブサイトでSDGsマークをつけましょう」と伝える。

 

CSR分野の活動は手を替え品を替え、目先を変えることが繰り返されてきた。企業自身が取り組んで良かったと振り返れるものが、いくつあっただろうか。歴史は繰り返すのだ。

 

各国の実情の違いは誰の政策目標の存在に関わらず、1.5° C 目標、2050年カーボンニュートラルを絶対視するのは、「環境主義」そのものであり、グレタ・トゥーンベリは、その象徴的な存在と言えるだろう。

 

ドイツ人の自然に対する強い思い入れは18世紀末のロマン主義にさかのぼり、 多くの課題を抱えている現代において、温暖化防止を全てに優先する環境原理主義の主張は、自由を愛し、豊かで快適な生活を求める人間の本質と相いれない。中世の異端審問やイスラム原理主義など、古来、異端を排除する原理主義が人間を幸福にしたためしはない。

 

現代の科学者は科学的真理を最優先する成人では決してない。彼らにとっては、自らの立場や地位を守ること、自らの研究を継続する環境を維持すること、自分の応援する政党が勝つことの方が、科学的真理の探求よりもはるかに重要なのである。

 

日本の自動車メーカーは厳しい環境規制をクリアする優れた内燃機関を開発してきた。だからこそ世界の市場で支持されている。にもかかわらず、なぜ環境に貢献をしてきたハイブリッド車や、厳しい燃料規制をクリアした功績を、世界にアピールしないのか疑問だ。

 

日本は世界の石炭火力発電所支援から撤退しているが、中国は逆に石炭火力発電所を次々と建設。世界シェアの3/4を受注し、また新しく発表された2020年の全石炭火力発電の80%以上を中国が占めた。中国は国家目標である「中国製造2025」を優先し、製造業のための電力確保に向け、準備をしている。

 

2017年に経済産業省がまとめた「長期地球温暖化対策プラットホーム報告書 パーク2の地球温暖化対策の進むべき方向」には、2050年までに温室効果ガスを80%削減すれば、「国内には農林水産業と2~3の産業しか残らない」という見解が示されている。

 

政治が現実からかけ離れた実現不可能な目標約束し、目標達成のために制度設計を誤り、規制や負荷をかけすぎると、産業経済を破壊する。

 

中国では、2021年1月現在で48基の原子力発電所が稼働している。さらに現在45の新たな原発を建設・計画中である。

 

投資や投機で国の経済は運営できない。そのために日本経済の屋台骨である自動車産業を犠牲にするようなことがあっていいのだろうか。EV によって、日本の自動車産業を失えば、年金どころの話では済まなくなる。EV が栄えても、国が滅んでしまえば、元も子もない。

 

本来エネルギー政策立案は、科学・技術・経済・環境の各側面から綿密に検討されたものだけが採用されるべきである。水素政策は、そのような検討には耐えられないので、結論として、水素政策は捨てるべきである。

 

日本の河川や海岸のゴミ拾いがウミガメやクジラを助けることにはほとんどつながらないことを、一般の参加者には理解した上で参加していただきたい。

 

 【目次】

 はじめに

第1章 「再エネ」が日本を破壊する

第2章 正義なきグリーンバブル

第3章 「地球温暖化」の暗部

第4章 国民を幸せにしない脱炭素政策

【3.本書の感想】

この手の本は、国の政策に対して文句ばかり言ってるだけじゃないの?と思われる方もおられると思いますが、SDGsや脱炭素についての問題点がよくわかります。

 

日本が、しくじったかもしれません。

 

日本は、世界的な枠組みや国際的な駆け引きにはめっぽう弱い国ですので、環境対策などは、世界的にしっかりと見識を持った人たちとよく議論をしながら進めてほしいと思います。

 

環境対策の為に、例えば日本にとって大事な産業を失うべきではないし、中国に負けるわけにもいきません。

 

日本の経済構造をよく見ながら、進めていかないと、これからの日本はさらに経済的地位が転落していくことになる可能性もあります。

 

環境問題というのは必ずしもすべてOKなのではなく、よく考えて対応していかないと、トレンドに踊らされるだけになってしまう、というのがよく理解できました。

 

SDGsや脱炭素など環境への対策は、すべて善であると考えが固まっている人にはぜひ読んで頂いて、その問題の多さをご理解していただきたいと思います。

 

割りと短時間で環境に対する問題点が理解できますので、ぜひ、ご覧ください!

 

SDGsの不都合な真実 「脱炭素」が世界を救うの大嘘

【4.関連書籍の紹介】

SDGs本をお探しの方に、おすすめ本を紹介します。

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環境ビジネスの動きがよくわかります。

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コロナ後、世界はどう変わっていくのでしょうか?

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ガラパゴスと言われても、そのこと自体は悪くないんです。

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最後までのお付き合いありがとうございました!