京都のリーマンメモリーズ

京都で働くサラリーマンです。東寺や書籍の紹介をします。

【書評】だれが本を殺すのか(上)(下) 佐野眞一  新潮文庫

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【1.本書の紹介】

こちらは、20年ほど前の取材を元に書かれた本です。

 

という訳で、当時取材を受けた人たちは今、それぞれ20年程、年を取っています。(笑)

 

当時から、出版不況と言われながらも、未だに当時と変わらない地位を保っている企業もあれば、消えた企業もあります。

 

そして、年間の本の出版数は、この本を取材した頃と変わらず、今も年間7万冊を超えています。

 

1日に200冊が誕生している勘定になります。

 

本が売れない、町の書店が潰れていると言われながら、未だに、1日200冊も出版されています。

 

私が驚いた読書家と言えば、メンタリストDaiGoですが、彼でも1日20冊程です。

 

日本の出版書籍の本数は、人間の読書の遥か限界を超えています。(笑)

 

これどういうことでしょうね。

 

本書では、著者から版元、取次、書店、読者に至るまでの本の流れを串刺しにし、図書館、書評、電子出版や電子書店の問題点まで取り扱っています。

 

上下巻合わせて900ページを超える内容ですが、そのエッセンスをお伝えできればと思います。

 

さて、本を殺すのはだれなんでしょうか?

【2.本書のポイント】

書店は単なる本の物販業じゃない。文化やソフトを売っているんだ。だから書店は快適で楽しい「場」でなければならない。これが私の持論です。

ー紀伊国屋、旭屋、有隣堂の強みは何ですか?ー 「人材が揃っているんです。それに歴史的蓄積。後は首都圏に旗艦店を置いていること。この三つでしょうか」

ジュンク堂書店社長 工藤恭孝

 

大型店競争は最後には効率競争になっていく。いくら店を大きくしても店員や中身がなければどうしようもない。効率の競争になると、結局は、柔らかい本ばかり売る結果になる 。

教文館書店社長 中村義治

 

取次には汗を流して売ろうという発想がないんです。 新刊バブルの原因は、何よりもまず高給取りの大手出版編集者にあります。僕は年間4万点が適正規模だと思います。本の値段が高くなっているのも大学ぽっと出の編集者の人件費のためです。

往来堂書店店長 安藤哲也

 

いま、本の業界を悪くしているのは、コンピューターで仕入れ、アルバイトに店頭を任せているような書店です。

さわや書店店長 伊藤清彦

 

伊藤が特に神経を使っているのは、「客注」への対応と手作りのPOPである。  

 

現在の出版界の今日は読者のことを忘れてしまったことがそもそもの原因になっているんではないか。 私はその町の文化程度は地域の書店を見れば分かると思うんです。

金魚の飼い方一つをとっても、本職の金魚に取材して、プロの金魚屋はどんな専門書を読んでいるかを聞き出し、その本を揃えることに腐心した。

平安堂書店会長 平野稔 

 

「存続するということは変わるということだ」

今井郁文堂三代目 今井兼文

 

いま「本」取り巻く状況がドラスティックに変貌していることをいやというほど痛感させられた。それは、われわれがいま、文化と流通と消費の活断層に紛れもなく勅命しているという事実だった。

 

再販制度、委託返品制御部護送船団的保護システムの破綻と液状化が、現在の出版クラッシュを招いている。

 

責任の一端は返品自由をいいことに客のことなんか全く考えてこなかった書店や、編集機能しか持たず流通は全て取次任せの出版社にあったことは確かです。

 

駄本の数が100万部売れても値段を下げぬまま幅を利かせ、骨身を削るようにして書いた作家の本が小数部ゆえにに本屋の店頭にはほとんどない状態というのは、著者の立場から見ても釈然としない。

 

近代化していない業界はチャンスがあると思った。ピアノと本は似ていたんです。

今も版元さんや取次には書店さんからダンボール箱を開けずに即返されている本が多い。つまり本は読者に届いていないんです。

ブックオフ社長 坂本孝

 

編集者は供給過剰の今という時代には、前工程、後工程もちゃんとやらないと

中央公論新社社長 中村仁

 

大学が大衆化することで却って「堅い本」が売れなくなった

岩波書店社長 大塚信一

 

編集者に一番必要なのは、今の時代を敏感にキャッチする勘の良さです。

草思社社長 加瀬昌男

 

私が葦書房を引き受けた時考えたことは、絶対に大きくしないということだった。

どうしても必要とする人に向けて、少々高くても我慢して買ってやろうと言われるような内容を備えた本を作るしかない、と思っている

葦書房社長 三原浩良

 

活字離れの若い人を読者層として考えるのは、現実問題としてもう無理だと思います。

海鳥社代表 西俊明

 

最近の書店さんは昔に比べてお客さんを掴んでいない

郷土出版社常務取締役 辻正道

 

じっくり時間をかけているのが地方出版のいいところである。 したたかな戦略としなやかな感性で読者に本を届け続けてきた「地方」出版社に、素直に学ぶべき段階にきている。

 

新人作家というものは、たいてい目利きの編集者の「眼力」信じているものである。その「眼力」世間に認知させるために頑張るようなところが、作家にはある。

 

オリジナリティが評価されるべきで、口当たりの良いものばかり紹介するのは、読者を冒涜している。

今は本を出す方、売り手、緊張感が足りないと思います。

自分の考えと上の考えがぶつかったとき、辞める覚悟までできているのが編集者です。

本というのは基本的に30年経っても50年経っても売れ続けるロングセラーだと、それが俺の本作りの基本だと

藤原書店社長 藤原良雄

 

いい編集者とは、けだし周囲の雑音に惑わされず、悠々と「道草」を食うことができる編集者のことである。こうしたタイプの編集者は、なぜ、絶滅状態になってしまったのだろうか。出版社は偏差値の高い学校秀才ばかりを集めた結果だと、私は考えている。

 

学校秀才がだめなのは優秀者だけを競い合っているからである。

 

ベストセラー本を何冊も買うより、一館あたり1冊か2冊に制限し、その余った金で他の本を買うべし、それこそ「書物の森」を構築する図書館人の本当の責務ではないか

書誌学者 林望

 

一定の水準を誇示して商品とすることで成功する、という産業の枠組みが、電子の世界で再現出来のかという問いがあった時、僕は非常に有象無象の世界になると思っている。

印刷本は国家を作った。インターネットの電子本は、その境を一緒に超える。

ジャーナリスト 富田倫生

 

本・書籍という商品はなくならないと思っていましたし今でもその考えは変わりません。

村上龍

 

書く人だけが激増し、読む人が極端に少なくなった現在の「本」の状況は、歌うものばかりで聞くものは滅多にいないカラオケボックスと酷似している。

 

年間7万3000点という異常な新刊洪水である。1日約200点という新刊攻勢が、本に対する読者の関心を食傷させ、読者の気持ちをうんざりさせている。

 

業界の体質が一向に改善されないのは、リタイアした編集者たちが、会社を辞めても生産活動を止めないからです(笑)。こうしてつまらない本ばかりが世の中に出ていく

 

日本の戦後教育で最も欠けていたのは、人と人との関係や、人と事物との関係を理解する技術の習得ではなかったかと、僕は思っています。  

 

「読む」という行為の基礎体力づくり、すなわち教育の地盤改良工事から始めない限り、未来の読者を作り出すことはできず、ひいては出版不況の原因の根源を絶つことはできないのではないか。

 

結局、本屋って待っていてもお客さんが来てくれるでしょ。本も待っているだけで適当に取次が配ってくれる。お客さんも本も向こうから来てくれるんですよ。書店って。

 

みんなが同じものを見て喜ぶという時代は、明らかに終わりましたね。例えていうなら、土俵がどんどんちっちゃくなっている。でも、その狭い分野での総合という考え方はまだあると思います。

富士山マガジンサービス代表取締役社長 西野伸一郎

 

出版不況の原因の一つは、やっぱり絶対の探求と言うか、そういう精神の衰弱じゃないかな(笑)。冷戦構造の崩壊で、絶対価値がどんどん、どんどん相対化されてきて、何も考えずにパッと結論を出す。本を読んでじっくり考える習慣がなくなり、一種の痴呆状態になってしまった。そういうものを考えない環境時代になってきた。

新曜社代表 堀江洪

 

【目次】

〈捜査編〉

プロローグ 本の悲鳴が聞こえる

第一章・・・書店 「本屋」あの魅力は、どこへ消えたのか

第二章・・・流通 読みたい本ほど、なぜ手に入らない?

第三章・・・版元 売れる出版社、売られる出版社

第四章・・・地方出版 「地方」出版社が示す「いくつかの未来図」

第五章・・・編集者 「あの本」を編んでいたのは、誰か

第六章・・・図書館! 図書館が「時代」と斬り結ぶ日

第七章・・・書評 そして「書評」も、消費されていく

第八章・・・電子出版 グーテンベルク以来の「新たな波頭」

エピローグ「本」生死をわけるもの

〈検死編〉

FILE 1 蔵書の死

FILE 2 読者の死と著者の死

FILE 3 書店の死と雑誌の死

FILE 4 「本」の復活を感じさせる小さな予兆

【3.本書の感想】

とても長いノンフィクションでしたが、意外と楽しく読めました。

 

時代を懐かしむ部分もありましたが、未だに、本はなくなると言いながら、本はなくなっていませんし、書店もあります。

 

小さな書店の数は減りましたが、大型店やネット書店が存在感を示しています。

 

「お金儲け」と「読んで欲しいという純粋な気持ち」の戦いが行われているようにも感じます。

 

本当に出版業界を支えているのは、この本は良い本だと信じて、目先の利益にとらわれず、出版に関わる人々だと思います。

 

出版の企画を上司にダメと言われたら、出版社をやめて、自ら出版社を起こして出版するという気概を持った人々の情熱に心を打たれました。

 

私が読むのはビジネス書が多いので、どちらかというと、比較的内容が薄いものが多いです。(笑)

 

しかし、ビジネス書の中にも、いろんな意味で良い本だなーと思うことは多々あります。

 

良い本があったら紹介したくなります。

 

この本も良い本です!

 

出版業界ってどうなっているのか、全体像を知りたい方はぜひご覧ください!

だれが「本」を殺すのか〈上〉 (新潮文庫)

 

だれが「本」を殺すのか〈下〉 (新潮文庫)

 

佐野さんの著書です。

佐野さんの代表的な著書のあらすじも紹介されています。

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 私が知る、読書家です。

メンタリストです!っていかがわしいと思いましたが、それなりの努力はされています。

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稀代の読書家でおなじみの出口さんです。

今は、立命館アジア太平洋大学(APU)の学長をされています。

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 見城さんは、本書でも取材を受けていましたが、紹介はしませんでした。(笑)

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立花さんも本をよく読む人ですね。脱帽。

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最後までお付き合い頂きましてありがとうございました!