京都のリーマンメモリーズ

京都で働くサラリーマンです。東寺や書籍の紹介をします。

【書評】人類の未来 AI 経済 民主主義 ノーム・チョムスキー レイ・カーツワイル マーティン・ウルフ ビャルケ・インゲルス フリーマン・ダイソン 吉成真由美 NHK出版新書

f:id:bkeita:20200724181453j:plain

 

【1.本書の紹介】

各分野の世界的な著名人、いわゆる世界の頭脳に様々なテーマについてインタビューした内容になります。

 

ここに登場してくる人たちもすごい人達なんですが、この一級品とも言える人たちに、適切な話題をインタビューしているこの日本人、吉成真由美さんもたいしたものです。

 

こんな日本人がいて嬉しく思いました。(笑)

 

インタビューされている人達はそれぞれすごい人なので、少しググれば名前が出てきますので、ここでは紹介を省きます。

 

登場人物の紹介をするだけで、長めの記事が出来てしまうからです。

 

ここに出てくる人たちはすごい人達ですが、たいていの人は、私は名前さえも知りませんでした。(笑)

 

【2.本書のポイント】

【ノーム・チョムスキー】
近代、アメリカの斜陽ということがよく言われます。しかしよく見落とされるのは、アメリカの斜陽は70年前から始まっているということです。アメリカの力のピークは1945年だったのです。

 

諜報活動とは、国民をコントロールすること、そして政府がやることを全て肯定するためのものです。


AI が人間の知能を超えるというアイデアは今のところ完全なる夢です。


人間の話となると、「シンギュラリティ」などと称して、全く非理性的になってしまう。われわれは他の生物を考える場合は非常に理性的なんだけれども、自分たちのこととなると、突如として非理性的になってしまう傾向があります。

 

【レイ・カーツワイル】
自分の情報を集めて、適切な方法でそれらの情報を(図形やグラフなどを使って)視覚化することによって、かなり的確な未来予測ができるのではないかと考えました。


我々の直感的な将来予測は、線形(比例直線の形)であって、指数関数的な曲線にはならないのです。


2030年ごろには、これらのコンピュータ・デバイスは血球ほどの大きさになります。血球サイズのロボットが血液中に入って、免疫システムを補助するようになるでしょう。


AI の重要なアプリケーションは、我々の神経系つまり脳に入っていて、あたかも実際に目や耳や皮膚から情報を受け取ったかのような感覚を提供し、ヴァーチャル・リアリティないしオーグメンテッド・リアリティを、脳内に構築することです。


太陽、風力、地熱からエネルギーを取り出すテクノロジーは、指数関数的にどんどん改良されてきているので、20年以内には、ほんど無尽蔵のエネルギーを手に入れることができるようになるでしょう。


3 D プリントして、3日で住宅を建造するということにもなっていくでしょう。


我々は資源が少ない時代を生きてきましたが、これからは、資源が余る時代に移行していく


われわれの生涯に最も影響があるのは、生物進化ではなく、文化やテクノロジーの進化の方です。


学校の最も重要な役割は、他の人たちと出会って、一緒に遊んだり、作業したりすることを学ぶということでしょう。

 

【マーティン・ウルフ】
歴史的に見れば、グローバリゼーションへの強い反動というのは、政治的な反動と結びついて、戦争と不況に帰結します。


何が起こってもアメリカが存在し続けることは確かでしょう。安全な流動資産の提供者、国際金融システムの安全な資産提供者として、代わりになるようなアメリカの競争相手はいない状況ですね。


物の市場はすでに世界市場になっているのに対し、政治はまだそれぞれの国レベルにとどまっている


主権国家とグローバル市場とのバランスをどう取っていくか、ということを真剣に検討する時期に来ているのだと思います。


主権国家の場合、国家を規制する法律がありませんから、交渉に頼ることになる。国家が破産したかどうかを決めるのが非常に難しいのは、つまるところほとんどの場合において、国家は支払い「不能」なのではなく、支払いに「同意しない」ということだからです。


日本政府は、財政のバランスをとることも必要ではあるけれども、それにもまして、経済がうまく機能していくことを、責任を持って最優先する必要があります。


日本企業は巨大な余剰資金貯蔵庫なんですね。

日本政府の課題は、いかにしてこの巨大な余剰金を取り出すかということです。
1つ目は投資のための画期的な動機を与えるというものです。
2つ目は企業の利益を吸い上げることです。


なぜ投資需要が低いのか
一つ目は、これらの企業が比較的低成長経済の下で運営されているということですね。 
二つ目は、資本集約型産業の場合、イノベーショがあったとしても、例えば再生可能な燃料システムに変換するといったような大型のものはほとんどなくて、ずっと資本集約型でないものにとどまっています


グローバリゼーションとテクノロジーの進展は、企業による大規模投資を妨げることになっているのです。


ヨーロッパの間違いが EU を作ったことではなく、結果があまり満足いくものではなくなるところまでプッシュしすぎたことでしょう。これは単一通貨を導入した国々に共通して言えることです。 


刮目すべきは、世界中すべての繁栄した国々は民主主義だということです。


政治システムというのは、その国の選挙で選出された政府があって司法権が存在するものだと理解しています。完全に分散型とシステムというのは、究極的には政府が存在しない状態、つまりアナーキーに移行するということを指しているのでしょうか。そうだとしたら私は全く賛成できません。アナーキーは破局を意味します。人間は政府なしではやっていけない。


普遍的な知という観点からすると、我々が知り得るあるいは納得できる人生の意味はないということですね。


他の人達との関係と他の人たちに何をしてあげられるかという感覚が、誰にとっても人生の意味の一部になっていると思います。


自分の両親は一体誰でどこから来たのかということが特別な意味を持ってくるのではないか。
 
【フリーマンダイソン】
そもそも気候は、人類による温室効果ガス放出以前にも、常に変動してきたのだ。


宗教はそれぞれの時代のモラル形成に重要な役割を果たしてきました。
われわれには、何らかのルールに沿った、その時代の合意に基づく行動のパターンというものが必要です。


人類が洞窟生活をしていた頃、子供達は焚き火を囲んで座り、大人たちの物語を聞いていた。このようにして文化というものが育ってきたわけです。ですから、私たちは、事実を確かめるよりも、物語を信じる傾向にあります。これが人間の本質です。


人生の目的は分かりません。確かなのは、我々が非常に社交的な動物であるということです。ですから、私たちは、お互いに助け合うことで善をなしています。利己的でない方をすることで、自分自身が幸せになることができます。


子どもたちをなるべき大人と一緒にいるようにして、大人たちと面白いことを一緒にやるようにする。そうして、子供同士でいじめる機会がないようにするのが良いのではないか。


広い理解の為には、文学や物語が必要になると思います。物事の理解は、サイエンスそのものから出てくることもありますが、多くの場合、サイエンスの外から来るのです。


【目次】


まえがき


第1章トランプ政権と民主主義の行方
ノーム・チョムスキー
1.アメリカは衰退すれども世界一か?
2.トランプはアメリカををどこへ導くのか
3.IS と中東問題
4.なぜ戦争するのか
5.テクノロジーの進歩と人類の未来


第2章シンギュラリティは本当に近いのか?
レイ・カーツワイル
1.「シンギュラリティ」の背景
2.医療エネルギー環境問題の未来
3.コンピューターによる機能の獲得
4.人類進化と幸福の意味
5.テクノロジーの光と影


第3章グローバリゼーションと世界経済のゆくえ
マーティン・ウルフ
1.グローバリゼーションのゆくえ
2.日本の借金問題
3.ブレグジットの影響とイギリスは EU の将来
4.ヨーロッパ問題、統合と分裂
5.民主主義の将来
6.経済発展には「国家」が必要
7.人生の意味


第4章ライフスタイルの行方
ビャルケ・インゲルス


第5章気候変動モデル懐疑論
フリーマン・ダイソン
1.気候変動の誤謬
2.科学と宗教
3.サイエンスの本質は何か
4.核エネルギーに可能性はあるのか
5.どのような教育が望ましいのか
6.未来への執着
7.アドバイスと推薦図書


あとがき

 【3.本書の感想】

一級品のお話を聞くことは大事だなと思いました。

 

なるほどと納得させられるお話がいくつもありました。

 

最近、テクノロジーの進化で指数関数の話が良く出てくると思います。

 

1、2、4、8、16、32、64、128・・・という進み方です。

 

我々人間がなぜ指数関数的に考えられないかというと、例えば太古の昔、鹿を追っている時、あのスピードであれば、後何秒後にあの岩の後ろから現れると言った計算をしていました。

 

それは直線的な計算で、それが役に立ってきました。

 

その考え方が我々の頭の中に植え付けられています。

 

だから、未来を直線的にしか予測できないので、予想外のことがたくさん出てきますね。

 

簡単な説明ですが、すごく納得しました。(笑)

 

自分が全くわからない事でも、この知識人達のなかでは、ある程度、解が出ています。

 

しかし、解決が難しいのは、経営コンサルタントと会社経営者との立場の違いみたいなもので、その理屈はわかるけども、実際それはできるのか?といえば出来ない事もあります。

 

出来ないことは、正しい解決策ではないというわけで、まだまだ問題は解消せずに存在し、世界の頭脳を持ってしても解決できていないことが多いのが現実です。

 

解決出来ていないにせよ、世界の頭脳が考えることを知っておくことは大事です。

 

目次を見て頂いて、気になることがあれば是非読んで下さい!

 

ビジネスマンの教養本としては、読んでおきたい1冊です。

人類の未来 AI、経済、民主主義 (NHK出版新書)

 

指数関数を英語でいうとエクスポネンシャルになります。

指数関数的考え方に基づいて、起こりうる未来を優しく解説しています。

www.fukuikeita21.com 

あちらこちらで評判の本です。

是非御覧下さい。

www.fukuikeita21.com

下巻です。どうぞ御覧下さい。

www.fukuikeita21.com

最後までお付き合い頂きましてありがとうございました!