京都のリーマンメモリーズ

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【書評】サピエンス全史 下 ユヴァル・ノア・ハラリ 河出書房新社

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【1.本書の紹介】

後半はいよいよ科学革命から現代、未来を見据えていきます。
 
科学の進化は人を幸せにしたのか?
 
今幸せか?
 
幸せになるために、このまま進化を続けても良いのか?
 
この論点から科学の進化を考える必要がありますが、実はこの重要な論点を今まで誰も考えていなかったそうです。
 
今後の科学の進化が人を不幸にするのであれば、思い切って進化を止めるのも一つだと思います。
 
「幸せ」とは、何でしょう?

【2.本書のポイント】 

貨幣や帝国と並んで、宗教もこれまでずっと、人類を統一する3つの要素の1つだったのだ。社会秩序とヒエラルキーはすべて想像上のものだから、皆脆弱であり、社会が大きくなればなるほど、さらに脆うくなる。宗教が担ってきた極めて重要な歴史的役割は、こうした脆弱な構造に超人間的な正当性を与えることだ。
 
宗教は、超人間的な秩序の信奉に基づく、人間の規範と価値観の制度と定義できる。
多神教は本来、度量が広く、「異端者」や「異教徒」を迫害する事はめったにない。
 
今日、東アジア以外の人々は、何かしらの一神教を信奉しており、グローバルな政治秩序は一神教の土台の上に築かれている。
 
過去500年間、近代科学は政治や企業、財団、個人献金者が科学研究に莫大な金額をつぎ込んでくれたおかげで、驚異的な成果を上げてきた。
 
人類が他の数ある目的地ではなくアラモゴードと月に到着した経緯を理解するためには、物理学者や生物学者、社会学者の業績を調べるだけでは足りない。物理学や生物学、社会学を形作り、特定の方向に進ませ、別の方向を無視させたイデオロギーと政治と経済の力も、考慮に入れなくてはならないのだ。
 
特に注意を向けるべき力が2つある。帝国主義と資本主義だ。科学と帝国と資本の間のフィードバック・ループは、過去100年にわたって歴史を動かす最大のエンジンだったと言ってよかろう。
 
遠征によって集められた情報の多く、特に天文学、地理学、気象学、人類学に関するデータは、政治や軍事にとって明らかに価値があった。壊血病の効果的な治療法の発見は、イギリスが世界の海を支配し、地球上の裏側にまで軍隊を派遣する力を持つことに大いに貢献した。
 
中国人やペルシア人は、蒸気汽関のようなテクノロジー上の発明(自由に模倣したり買ったりできるもの)を欠いていたわけではない。彼らに足りなかったのは、西洋で何世紀もかけて形成され熟成した価値観や心は、司法の組織、社会政治的な構造で、それらはすぐに模倣したり取り組んだりできなかった。
 
日本が例外的に19世紀末には既に西洋に首尾よく追いついていたのは、明治時代に日本人が並外れた努力を重ね、西洋の機械や装置を採用するだけにとどまらず、社会と政治の多くの面を西洋を手本として作り直した事実を反映しているのだ。
 
人々は想像上の財、つまり現在はまだ存在していない財を特別な種類のお金に変えることに合意し、それを「信用」と呼ぶようになった。
 
生産利益は生産増加のために再投資されなくてはならない
 
自由市場資本主義は、利益は公正な方法で得られることも、公正な方法で分配されることも保証できない。それどころか、人々は利益と生産を増すことに取り憑かれ、その邪魔になりそうなものは目に入らなくなる。成長が至高の善となり、それ以外の倫理的な考慮と言うたがが完全に外れると、いとも簡単に大惨事につながりうる。キリスト教やナチズムなど、一部の宗教は、炎のような憎しみから大量虐殺を行った。
 
人類史上初めて、供給が需要を追い越し始めた。そして、まったく新しい問題が生じた。一体誰がこれほど多くのものを買うのか?
 
伝統的に家族やコミュニティが果たしてきた役割の大部分は、国家と市場の手に移った。
 
戦争は採算が合わなくなる一方で、平和からはこれまでにはないほどの利益が上がるようになった。
 
人間には明らかに権力の乱用の機会があることに照らせば、人間は力を増すほどに幸せになれると考えるのは、あまりに安直だろう。
 
家族やコミュニティは、富や健康よりも幸福感に大きな影響を及ぼすようだ。
 
何にも増して重要な発見は、幸福は客観的な条件、すなわち富や健康、さらにはコミュニティにさえも、それほど左右されないと言うことだ。幸福はむしろ、客観的条件と主観的な期待との相関関係によって決まる。
 
幸せかどうかが期待によって決まるのなら、私たちの社会の二本柱、すなわちマスメディアと広告産業は、世界中の満足の蓄えを図らずも枯渇させつつあるのかもしれない。
 
生物学者の主張によると、私たちの精神的、感情的世界は、何百万年もの進化の過程で形成された生化学的な仕組みによって支配されていると言う。
 
お金や社会的地位、美容整形、壮麗な邸宅、権力の座などはどれも、あなたを幸せにすることができない。永続する幸福感は、セロトニンやドーパミン、オキシトシンからのみ生じるのだ。

【3.本書の感想】

「人々は利益と生産を増すことに取り憑かれ」大事なものをいくつも犠牲にして来た過去があります。

 

「今日 人類が地球と惑星の境界を超越する。生物が自然選択ではなく知的設計によって形つくられることがしだいに多くなる。
未来 知的設計が生命の基本原理となるか。ホモ・サピエンスが超人たちに取って代わられるか?」

 

世の中では、何であれ、誰かより早く発見、発明できることを急いでいますが、それが、人類の進歩に貢献しているのでしょうか?

 

人類の破滅に貢献しているのものはないでしょうか?

 

そう考えると、見つけるべきでなかった発見、発明に心当たりがありますね。

 

 「永続する幸福感は、セロトニンやドーパミン、オキシトシンからのみ生じるのだ。」

 

著者が主張するのはつまり、大金持ちでなくても、幸福物質を出す環境に自分を置く、または、幸福物質をすぐに出せるような技を身につけることで幸せになれると言うことですね。

 

大量の物に囲まれる事が幸せであるというのは、過去のイメージです。

 

様々なことが明らかになった現代においては、何もないところで幸せを見つけられる技術を持つことが、本来あるべき姿なのではないでしょうか。

 

例えば、人々が富の追求を止め、幸せだと感じる人が余分なお金で困っている人を助け、助けられた人がまた別の人を助けていく。

 

このような循環が始まれば、地球環境に優しい、生物としての人間の姿に近づく事が出来るかも知れません。

 

話が長くなりますが、一言で言うと、大変お勧めの本です。

 

サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

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最後までお付き合い頂きましてありがとうございました!